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ひとつよが

夏の庭 The Friends

晴耕雨読。


最近はYOGA関連本が多かったから久しぶりの小説。

ネットのガレージセールでセット購入した中に含まれていた一冊。


この季節にふさわしいタイトル

湯本香樹実著



出だしからあっという間に少年たちの夏の日々に引き込まれる。


3人の少年と

ちょっと変わったお爺さんの物語。


少年の気持ちや心の中のつぶやき


人間関係

自分、親、友人、友人の親

友人の死んだおばあさん

変わったおじいさん


この年頃特有の

死や死体への興味と恐怖


怖いのに見たい

知りたいのに怖い


生きている人間

死んだ人間

死にゆく人間


人間模様だけでなく

細かな描写に

かつての自分自身の日常を

追体験しているような感覚


探偵ごっこ

蚊取り線香

洗濯竿

ぺちゃんこの座布団

スイカ

夏休みのプール

植物の種

お化けのお話


懐かしい風景や匂い

音すらも色鮮やかに蘇る


 

故郷新潟の実家の風景

一緒に暮らしていた寝たきりの祖父と

大好きだった祖母のこと


初めて人間の死に対面した日のこと


学校に出かける時には

静かな呼吸をしていた祖父


授業中に呼び出されて家に帰ると

出かけた時と同じ場所

同じ布団の上にいる祖父


呼吸が消えている

身体が硬くなっている


祖父の布団の上だけ

時間が止まったように

びくともしない


身体を清められ

鼻や口に綿が詰められる


小学校2年生の夏だったと思う


何かを失ったのだという現実が

数日後にやってきたことを覚えている


それまで言葉に出来なかった感情


自分の意志とは別に

突然涙が溢れて嗚咽が漏れてくる


自分自身に起きたその状況を

もう一人の私が

どこか覚めた眼で見ていた

あの不思議な感覚


子供時代に経験した

自然の摂理に従った死との遭遇は

とても自然なことで

当たり前なことで

大切なことだったのだと思う


死を穢れ(けがれ)として

悼み嫌うような風潮もあるけれど

死は生と常に対であるもの

生きることのゴールは死にゆくことであるという事実


その間(アワイ)に今この瞬間の自分が在るということ


 

最期のページを読み終えた時は

まるで一本の良質な映画を見終えた感覚でした。


と思ったら

既に映画化されていました。


お爺さん役は故三國連太郎さん。

既に十数か国でも翻訳出版されているんですね。


久しぶりの小説。


自ら選んだ一冊ではない本が

とても善い作品だったことに感謝です。

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