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ひとつよが

春の雨に。眼横鼻直(がんのうびちょく)。

小さな子供が 地面を這う蟻(あり)を じーーっと見続ける

そこには 期待も心配も 計画も判断もない

蟻が同じ道を一生懸命に 行ったり来たりするのを ただ飽きずに眼で追うだけのこと

その時間は 周りの音や存在が全て消え 静寂のなか ただ目の前の蟻と それを観る自分自身だけ

そしてある一瞬 その時空に穴が開いたように 周囲の音や存在、現実が 一気に流れ込んでくる

いつの日からか私たちは 日々の行動に『意味』を持ち あるいは『やらなくてはならない』理由があり 時には『言い訳』だったり または『そうするべき』であり そうすることが『世のため人のため』で それが『善き行い』であったり 所謂『常識』だったり

経験とともにそうすることで 家族や学校、会社や世間という あらゆる社会で

日々どうにか衝突を避けながら

出来るだけうまくいくよう 出来るだけスムーズにいくよう 効果的に効率的に 工夫しながら精いっぱい生きている

本当にすごいことだなぁと思う ひとりひとり環境も事情も異なる中で 自分の生き方を選び 人と関わり

心配しながら探ったり うまくいくよう計画したり 不安と期待を持って試したり 結果に判断を持って うまくいかなければ反省したり

その中に喜怒哀楽を味わう

人間社会を生きるってものすごいエネルギーだと思う

だからこそ あの小さな蟻の行進を ただただ眺めていた時間

目の前で起きていることを ぽかーんと口をあけて 瞬きすることすら忘れて

凝視する時間 静寂の時空間

意図も意味もなく 生産性も不安も期待もなく

最低限のエネルギーだけで

ただ観る

そんな時間が とても優しくて とても愛おしいなと

空から大地へと降り続く 春の雨を見ながら思い出しました

禅語:眼横鼻直(がんのうびちょく) 意;眼は横に並び、鼻は縦についている 師匠が教えてくれた道元禅師のことば

そのまんまを観ること ありのままを観てそれを受け容れること

自分自身のことも あの蟻の行進をみていた頃のように ただ観てみようと思う

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